子どもの歯並びが悪くなる原因と予防法 – 将来の健康を守るために今できること

2025/06/28

お子さまの歯並び、気になりますか?

歯並びは見た目だけの問題じゃない

歯並びは見た目の問題だと思われがちですが、実はそれだけでなく、お子さまの成長や将来の健康、歯の寿命に大きく関わる大切な要素です。

80歳で20本以上の歯を残す「8020」を達成している方は、歯科的な問題が少ないという特徴があり、そのためには子どもの時期からの口腔育成・管理が重要となります。

 

では、なぜ子どもの歯並びは悪くなってしまうのでしょうか?

 

そして、それを防ぐために私たちは何ができるのでしょうか?

今回は、子どもの歯並びが悪くなる原因と、ご家庭で取り組める予防法について、詳しくお話しします。

歯並びが悪くなる主な原因とは?遺伝だけではない!

歯並びが悪くなる原因について、「顎が小さいから?」「遺伝かな?」「柔らかいものしか食べないからかな?」など、様々なことが言われています。

もちろん、遺伝が全く関係ないわけではありません。近年の研究では、歯並びが悪くなる要因のうち、遺伝の問題は全体の約2割程度と言われています。

では、残りの約8割は何が原因なのでしょうか?それは「環境の問題」です。環境の問題とは、具体的に以下のようにお口の機能的な問題がずれてしまうことを指します。

• 呼吸の仕方
• ベロ(舌)の使い方
• 口唇(唇)の閉じ方
• 飲み込み方(嚥下)

これらの機能はすべて連動しており、特に「呼吸の仕方」は歯並びに大きな影響を与えることがわかっています。

 

現代の子どもの8割が「口呼吸」?

 

正しい呼吸は鼻呼吸です。鼻で吸って鼻で吐くのが正しい鼻呼吸です。ところが、現代の子どもたちはどうでしょうか?

文献によると、今の子どもは10人中4人ほどが慢性的に口呼吸(お口がポカンと開いている状態)をしており、さらに約4人がその予備軍と言われています。

つまり、現代の子どもの約8割が口呼吸、またはその予備軍なのです。

なぜこんなに口呼吸の子どもが増えているのでしょうか?それは、一つの原因だけでなく、様々な要因が複雑に絡み合っているからです。

• 哺乳・離乳食の時期のこと
• 姿勢(特に悪い姿勢)
• 鼻疾患やアレルギー
• 食べ物
• 舌の使い方の問題
• 嚥下(飲み込み方)
• 運動習慣
• スマートフォン
• その他(近年ではマスク生活なども影響したと言われています)

中でも、「姿勢」は口呼吸と密接に関わっています。例えば、テレビ台の上や壁掛けのテレビを床に座って見る場合、首が上に上がった姿勢になりますね。

車の後部座席で上の画面を見ている時も同様です。このような首が上に上がる姿勢は、やってみると分かりますが、自然とお口が開きやすくなってしまいます。

逆に、下を向く姿勢では口は開きにくいのです。このように、お子さまの日常生活の中での些細な姿勢も、口呼吸を誘発する要因となります。

 

また、舌の筋肉が十分に発達していないと、舌を上あごにつけることが難しくなり、舌が落ちてしまってお口が開いたままになってしまいます。

舌は人間にとって呼吸や飲み込み、発音などに影響する非常に重要な器官です。

 

「口呼吸」が引き起こす様々な問題

口呼吸が習慣化すると、歯並びが悪くなるだけでなく、お子さまの心身の健康に様々な悪影響を及ぼすことがわかっています。

 

1. 歯並びへの影響

舌が正しい位置(上あごのスポット)にないと、歯を押したり、舌の重みで下あごが下がったりして、歯並びが悪くなる直接的な原因となります。口呼吸の影響で起こりやすい歯並びの問題には、以下のようなものがあります。

• 叢生(そうせい)/ スペース不足: 歯がデコボコに生えたり、歯が並ぶスペースが足りなくなったりします。
• 開咬(かいこう)/ オープンバイト: 上下の前歯がかみ合わずに隙間が空いてしまい、麺類などが前歯で噛み切りにくくなります。舌を突き出して飲み込む癖が残っていると起こりやすいです。
• 上顎前突(じょうがくぜんとつ)/ 出っ歯: 上の前歯が下の前歯よりも前に出てしまい、お口が閉じにくくなったり、無理に閉じると口元が不自然になったりします。

 

2. 顔つきへの影響(正常な顔貌の発育阻害)

口呼吸は、お顔の正常な発育を妨げ、特徴的な顔つきにしてしまうことがあります。これを「アデノイド顔貌」と呼びます。

アデノイド顔貌の特徴:
• 口呼吸により口が少し開いたまま
• 口周りの筋肉(口輪筋など)が弱まる
• 下あごが引っ込むことで、前歯が出っ歯に見える
• あごの発達が悪く小さすぎるため、歯並びが悪くなる
• 鼻の下が伸びて面長になる
• 鼻が詰まりやすくなり、鼻水も多い
• 首と顔の境目がはっきりしなくなったり、二重あごになったりする

論文でも、口呼吸による影響として、上下顎の後退や下顎の後方回転(顔が長くなる)が発表されています。

本来、鼻呼吸をしていれば顎は前に発育しますが、口呼吸を続けると後方に垂れ下がってしまう傾向があります。

 

3. 睡眠への影響(睡眠障害)

口呼吸が続くと、いびきや睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高まります。

これは、上下の顎が後ろへ下がると気道が塞がれてしまうためです。

顎の発達が悪くて気道が狭くなることなどが、子どもの睡眠障害の原因の一つとして考えられます。
子どもの睡眠障害は決して少なくありません。矯正をしているお子さまの10人に1人程度は睡眠の検査を勧められることもあります。

睡眠障害は、様々な問題を引き起こす可能性があります。

• 成長ホルモン分泌の低下: 成長ホルモンは体の成長(身長だけでなく顎骨の大きさにも関係)に重要です。
• 集中力の低下
• 夜尿(おねしょ)
• 日中の多動
• 日中の眠気
• 癇癪(かんしゃく)
• 朝食欲がない
• 発達障害の可能性(ADHDの7割は睡眠障害を持っているとも言われます)

このように、顎が下がっているから睡眠が取りにくい、睡眠が取りにくいから成長ホルモンの分泌が悪く顎が前に出にくい、という悪循環(スパイラル)に陥ってしまうこともあります。

 

4. 虫歯や歯周病のリスク向上

口呼吸によってお口の中が乾燥すると、唾液の自浄作用が低下し、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくく汚れが溜まりやすくなるため、さらにリスクが増加します。

 

5. その他の様々な問題

口呼吸は他にも、以下のような全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。

• 風邪やアレルギーの増加(鼻が空気清浄フィルターの役割を果たすため)
• 猫背
• 口臭(口の乾燥や歯垢の蓄積による)
• 運動能力の低下
• 脳に悪い影響、認知症を引き起こしやすい
• 唇がカサカサになる
• 扁桃腺の肥大が起こりやすくなる
• 口腔発達不全症として、舌の発達不足が呼吸、飲み込み、発音、歯並び、顔つき、発達障害などへ影響を及ぼす可能性。

 

間違った飲み込み方も問題です。舌を前に突き出したり、お口の周り(口輪筋)やあご(オトガイ筋)に力がかかったり、飲み込む時に必ず目を閉じたりする飲み込み方は、顎の発育を阻害する力がかかってしまい、叢生や開咬などの歯並びの悪化に繋がります。

舌を突き出す飲み込み方は1歳以降に消失すべきものですが、残ってしまうと問題になります。

将来の歯並びのために今すぐできること – ご家庭での予防と対策

 

このように、歯並びが悪くなる原因や口呼吸の影響は、日々の生活習慣に深く根ざしています。

裏を返せば、毎日の少しの意識と工夫で、お子さまの歯並びと全身の健やかな成長をサポートすることができるのです。

1. 「鼻呼吸」を習慣にしましょう
最も大切なのは、正しい「鼻呼吸」を身につけることです。お子さまのお口が開いていないか、鼻で呼吸しているか、普段から意識して見てあげましょう。

• 舌の正しい位置を確認: 舌の先は、上の前歯の約5mm後ろにある「スポット」と呼ばれる場所に付いているのが望ましいです。普段から意識してスポットに舌を置く練習をしましょう。スティックの先をスポットに当ててから舌で触る練習も効果的です。

• 「あいうべ体操」にチャレンジ: 毎日「あいうべ体操」を行うことで、舌の筋肉(舌力)がつき、鼻呼吸ができるようになります。食後に10回、1日合計30回が目安です。

• 正しい鼻呼吸を練習: ゆっくり長く息を吸ったり吐いたりする練習をしましょう。吸って2秒、吐いて4秒など、数を数えてみるのも良いです。肩や胸は動かさず、お腹(横隔膜)だけを使って呼吸する腹式呼吸を意識しましょう。鼻の下に鳥の羽があるイメージで、羽を飛ばさないように静かに呼吸するのも効果的です。

• 寝た姿勢での鼻呼吸練習: 仰向けに寝た姿勢で、お腹の動きを意識しながら鼻呼吸を練習するのもおすすめです。
体が緊張していると呼吸が浅くなりやすいので、感覚遊びなどで体の緊張をほぐしてあげることも、自然とリラックスして体の使い方や呼吸が上手になることに繋がります。滑舌が悪い子はお口の緊張がとれていないことが多いので、歯が生えていないところはフィンガーブラシで優しく触るなど、お口周りのマッサージを取り入れるのも良いでしょう。

 

2. お口周りの筋肉を鍛えましょう
舌や唇など、お口周りの筋肉を鍛えることは、正しい呼吸や飲み込み方、そして歯並びのために非常に重要です。

• お口ふわふわマッサージ: 唇の形を良くし、お口の周りを柔らかくしてくれます。

• 「ふきもどし」や「しゃぼん玉」遊び: ふきもどしを吹いたり、シャボン玉を飛ばしたり、風船を膨らませたり、風車を回したりする遊びは、お口をすぼめる動きで口輪筋などの筋肉を鍛えるのに効果的です。ふきもどしは長さで難易度を調整できます。

• 「にらめっこ」: 普段使わない顔の筋肉をたくさん使うので、お口の周りや顔の筋肉のトレーニングになります。絵本を見ながら親子で楽しく取り組めます。

• 舌のトレーニング: 舌先を尖らせて強く押す「ディップ」、舌を様々な方向に動かす「ベロタッチ」、そして有名な「パタカラ体操」 なども効果的です。毎日の歯磨きとセットで取り組むのがおすすめです。

これらのトレーニングは、お子さまが「やらされる」と感じると嫌になってしまうので、ぜひ「楽しく」取り組んでみてください。遊びの中でお口を育てるという意識が大切です。

 

3. 正しい「飲み込み方」を身につけましょう

お口周りの筋肉が正しく使えるようになると、飲み込み方も自然と改善されます。正しい飲み込み方では、舌が常にスポットの位置にあります。
食事中の水分摂取に注意: 食事中にお水やお茶を常に置いておき、食べ物を水分で流し込んでしまう癖は、噛む回数が減るだけでなく、消化不良を起こしたり、顎の発育を妨げたりする可能性があります。水分摂取は食事の後にまとめてする習慣をつけましょう。

 

4. 「姿勢」を見直しましょう

姿勢の悪さは口呼吸を誘発し、歯並びにも影響します。正しい姿勢とは、耳、肩、骨盤、くるぶしがまっすぐ一直線になっている状態を指します。

• 赤ちゃん期からの姿勢: 0歳から1歳までの「黄金期」の発達・発育を促す正しい姿勢を意識しましょう。

哺乳や抱っこの姿勢(まん丸姿勢、体がねじれていない、足がお母さんにつく、体が反らないなど)、寝る時の姿勢(枕で頭を固定し体は自由に)、食事の姿勢(足の裏が床または足台につく) などが重要です。骨盤を固定するようなバンボやおひな巻きの長時間使用は避けましょう。

• 体を自由に動かす時間を増やす: 赤ちゃんの自発的な運動を尊重し、体を自由にした状態の時間をなるべく増やしてあげましょう。

• 足の指を使う習慣: ハイハイをたくさんさせてあげたり、家の中や施設内では基本的に裸足で過ごしたりして、足の指をしっかり使う動作を増やすことで体幹が鍛えられ、正しい成長や良い姿勢に繋がります。ハイハイの時に足指で地面を蹴ることも大切です。

• 靴選びと履き方: 正しい靴を選び、正しく履くことも姿勢のために重要です。かかとがしっかりしたもの、ハイカット、マジックテープ2本で甲をしっかり固定できるものがおすすめです。

かかとを踏まない習慣をつけましょう。おさがりの靴は前の子の癖がついているため避けた方が良いでしょう。靴を履く際は、座って、紐やマジックテープを外し履き口を広げ、足を入れ、かかとを床にトントンと打ち付けて靴に合わせる手順を意識しましょう。

• 感覚遊び: 体が自然とリラックスし、体の使い方や呼吸が上手になる感覚遊びも、姿勢に関係します。

ベッドでのゴロゴロ遊び、抱っこ遊びで感覚過敏を改善する、足指を伸ばす「指のば体操」なども効果的です。

 

5. 「食」を見直しましょう – 食べ方と栄養

「硬いものを食べないと顎が育たない」と言われることもありますが、顎の発育には硬さだけでなく、舌や口唇、頬の筋肉などの機能が正しく使われることが重要です。食べ物そのものだけでなく、「どのように食べるか」、そして「何を食べるか(栄養)」も歯並びに関係します。

• 離乳食開始のタイミング: 離乳食を早く始めすぎると、丸飲みや舌の動きがうまく獲得できない可能性もあります。月齢はあくまで目安とし、お子さまの口腔発達に合わせて焦らず進めましょう。既に始めている方も、しっかり噛めているか確認してみましょう。

• 「手づかみ食べ」を応援: 離乳後期(9〜11ヵ月頃)は「自分で食べる」意欲が出てくる時期で、手づかみ食べにぴったりです。手づかみ食べは、前歯でかじりとる練習、自分の一口量を覚える練習、指先の神経の刺激になるなど、発達に良い影響があります。指先を刺激することは脳にも良い影響を与えます。かたはめや積み木、ボール、スカーフ遊び、よじ登りなども手づかみ食べを促す遊びになります。

• 子どもが食べやすい姿勢: 足の裏が床や足台についている、姿勢が安定するように椅子とテーブルの高さを調節する、といった食べやすい姿勢を整えてあげましょう。これは子どもだけでなく大人にとっても大切なことです。

• 「ながら食べ」は要注意: テレビを見ながらなど、「ながら食べ」をすると食べることに集中できず、噛めない、噛まない、ダラダラ食べ、遊び食べなどの悪い癖が付いてしまいます。テレビを消す、おもちゃを片付けるなど、食事に集中できる環境を作りましょう。

• 一口量や切り方を工夫: 一口量が多すぎると丸飲みになりやすいので、少なくしたり、かじりとって食べられるように切り方を工夫したりするのも良いでしょう。

• 薄味を心がける: 味付けは大人の1/3〜1/2を心がけましょう。濃い味付けは味覚の発達を妨げたり、将来の生活習慣病に繋がったりする可能性があります。

• 水分摂取は食後に: 食事中に水分で流し込む癖を防ぐため、お茶や汁物は口の中に食べ物がなくなってから飲む、あるいは食事の後にまとめて飲むようにしましょう。

• 口を閉じて奥歯で噛む練習: お口を開けてクチャクチャ音を立てて食べる癖がないか確認し、口を閉じて奥歯で噛むことを促しましょう。乳歯は永久歯より噛む力が弱いので、無理に固いものを食べさせなくても大丈夫です。ごはんをすりつぶす運動をすることが大切です。
◎ 子どもの成長に必要な栄養素 – 特に「タンパク質」と「鉄」
子どもの健やかな体や顎の発育には、栄養も非常に重要です。特に大切な栄養素は、皆さんが思っている「野菜」ではなく、「タンパク質」です。

人の体の約15〜20%はタンパク質で出来ており、筋肉や臓器、肌、髪、爪、ホルモン、酵素、免疫物質など、体を作る材料となり、体の調子を整える様々な働きをしています。
1歳の子どもで1日約20g(卵約3.3個分)のタンパク質が必要と言われています。タンパク質は、肉・魚・卵・大豆製品からバランスよく摂取することが大切です。間食でタンパク質を意識して摂るのもおすすめです。

また、「鉄」も子どもにとって非常に重要な栄養素です。鉄は赤血球の材料となり、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。

生後6ヶ月頃から、赤ちゃんはママからもらった貯蔵鉄が無くなると言われています。
鉄不足が続くと、貧血やめまいだけでなく、発達や知能の遅れ、いつも不機嫌、乾燥肌や皮膚トラブル、夜泣き、疲れやすい、朝起きれない、集中力がない、イライラ、癇癪 など、様々な症状を引き起こす可能性があります。これらは、子どもの個性や性格ではなく、栄養不足が原因である可能性もあります。

タンパク質や鉄が不足しやすい原因には、肉の摂取量が少ない、運動をしている、成長期、皮膚トラブルがある、などがあります。

妊娠中に貧血だった方や出産時の出血が多かったママ、二人目以降の出産経験のあるママは、自身やお子さまも鉄欠乏になっている可能性があるので、しっかり鉄補給しましょう。

鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、吸収率の良いヘム鉄はそのまま、非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。

レバー(特に牛レバー)や赤身肉、卵などがおすすめです。鉄味を感じさせずに食事に混ぜられる鉄サプリなども活用できます。

簡単な骨だしスープ(ボーンブロススープ)も、ビタミン、ミネラル、タンパク質、コラーゲンが豊富でおすすめです。

 

6. 「おやつ」との上手な付き合い方

幼児期のおやつは、体が小さいわりに多くのエネルギーや栄養素が必要なのに胃が小さく、食事だけでは必要な栄養量を満たせないことがあるため、

それを補う「捕食」としての役割があります。おやつは、エネルギーや栄養素、水分補給だけでなく、心と体のリフレッシュの時間でもあります。

お菓子で子どもを甘やかす時間ではありません。

• おすすめのおやつ: 甘いお菓子よりも、果物や野菜、そしてタンパク質がしっかり摂れるものがおすすめです。

ゆで卵、プロテイン、ちくわ、かまぼこ、シーチキンを乗せたサラダ、冷凍唐揚げ、卵入りのスープやお味噌汁など、パパっと食べられるものが便利です。

• 「ダラダラ食べ」は要注意: ダラダラとお菓子を食べ続けてしまうと、お口の中が常に酸性状態になり、歯が溶けて虫歯が進行してしまいます。

また、血糖値の乱高下を引き起こし、低血糖症(血糖値の調整がうまくいかない状態) の原因となる可能性もあります。

低血糖は、イライラ、癇癪、集中力低下、疲れやすさ、夜泣きなどの原因になることもあります。

• 時間と量を決める: おやつの時間と量を決め、ダラダラ食べはやめましょう。3歳以降は食事がしっかり摂れるようになるので、

15時の1回が理想です。夕食のおかずを先に少しあげるのもおすすめです。

• 甘味との付き合い方: どうしても甘いものを欲しがる時は、低糖質のものを選んだり、「先にタンパク質を食べてから甘いもの」というルールにしたりすると、

虫歯や低血糖のリスクを下げられます。さつまいもなどの自然な甘さのものや、使う甘味料をはちみつや黒糖にするのもおすすめです。

おすすめのごはんの食べ方としては、野菜(食物繊維)→タンパク質→炭水化物の順に食べることで、血糖値の上昇が緩やかになります。

低血糖を予防するためにも、栄養バランスの良い食事を規則正しく(朝・昼・晩の3食+捕食)、そして糖分を摂りすぎないことが大切です。

 

7. 虫歯予防もしっかり行いましょう

歯並びが悪くなると虫歯や歯周病のリスクが上がるため、日頃からの虫歯予防も重要です。

虫歯の原因は、お口の中にいるミュータンス菌が糖分をエサに酸を出し、歯を溶かすことです。

ミュータンス菌は生後10ヶ月〜3,4歳頃に大人の唾液を介して感染することが多いため、「食べ移し」には注意が必要です。

• 虫歯リスクを知る: 唾液検査でお子さまの虫歯のなりやすさを調べることができます(3歳以上推奨、ご家族での実施も効果的)。

• フッ素を活用: 歯を強くするためにフッ素を活用しましょう。歯医者さんでの高濃度フッ素塗布(3ヶ月に一度)、

フッ素洗口、フッ素入り歯磨き粉(年齢に合った濃度) などがあります。使用量を守ればうがいができなくても大丈夫です。フッ素を使っても絶対に虫歯にならないわけではありません。

• 丁寧な歯磨き: 虫歯になりやすい場所(上前歯の間、奥歯の溝、歯ぐきの境目、奥歯の間) は特に丁寧に磨きましょう。

乳歯が生え始める前から歯ブラシに慣れるトレーニングを始め、お口周りのスキンシップで慣らしてから磨くのがスムーズです。

1歳頃からは「食べたら磨く」習慣をつけ、2歳頃からはブクブクうがいやフロス練習も始めましょう。

やさしい力で奥歯から磨き、敏感な前歯は最後に磨くのがポイントです。歯磨きを嫌がる場合は、好きな音楽をかけたり、お口周りのマッサージで緊張を和らげたり するのが効果的です。

デンタルフロスを使うと歯ブラシだけでは落とせない歯垢を90%近く除去でき、虫歯予防だけでなく口臭予防にも繋がります。

奥歯の溝にはシーラントも有効な予防法です。

• 定期検診: 定期的に歯医者さんで検診を受け、虫歯の早期発見や予防処置、歯磨き指導などを受けましょう。

 

8. ことばの発達もサポートしましょう

「学びのためのピラミッド」では、体の状態(感覚、動作、呼吸)が土台となり、その上に言語や学習が積み上がると考えられています。

呼吸や口周りの機能は、ことばの発達にも関わっています。構音(発音)は年齢によって獲得できる音が異なり、個人差がありますが、

4、5歳になっても言い間違いが多い、滑舌がよくないなど気になる場合は、言語訓練で改善することがあります。

発音練習には、お水ぶくぶく、がらがらうがい、ふきもどしなど、唇や舌の使い方を練習するものが効果的です。

また、コミュニケーションの発達では、自分と他者と同じものを見て感情を共有する「共同注意/共同注視」が重要で、

これが言葉でのやり取りや「伝えたい」気持ちに繋がります。子どもの遊びにオーバーに実況したり、

関わり遊びの中で「あれ?」と変化をつけたりすることも、共同注意を促し三項関係(自分・大人・おもちゃという1対1対1の関係)の発達を助けます。

もし、お子さまの言葉の発達やコミュニケーションについて気になることがあれば、早めに専門家(言語聴覚士など)に相談してみましょう。

当院でも言語訓練相談を行っています。

 

成長の「ピーク」を活かす小児矯正という選択肢

 

これまでお話ししたご家庭での予防は、将来の歯並びのために非常に大切です。

しかし、それでも歯並びの悪化が懸念される場合や、より積極的に顎の成長を良い方向に導きたい場合には、「小児矯正」という選択肢があります。

顎の発育には「ピーク」がある。顎の発達のピークは、一般的に5歳・6歳・7歳と言われています。この大切な時期に適切なアプローチを行うことで、

顎を大きく成長させ、将来歯が並ぶスペースを確保できる可能性が高まります。

この成長のチャンスを逃してしまうと、機械的に顎を大きくしたり、永久歯を抜歯してスペースを作ったりする必要が出てくる可能性が高くなってしまいます。

発育は待ってはくれません。

当院では、このピーク時期を最大限に活かすため、最短で5歳から小児矯正をスタートしています。

 

当院の小児矯正は、まさに子どもの「成長」を使った矯正なのです。

 

小児矯正の大きなメリットの一つに、「歯を抜かない」ことが挙げられます。

大人になってから歯並びを治す場合、歯がデコボコでスペースが足りない時には、抜歯が必要になることがあります。

しかし、抜歯はそれなりにリスクが高い処置です。

近年、矯正による抜歯が呼吸にどう影響するかという研究が進んでおり、特にアジア人においては、矯正による抜歯によって気道が狭くなったり、

舌骨が下方に移動したりする影響を受けやすい可能性が示唆されています。大人になってからの抜歯矯正は、気道閉塞や睡眠障害のリスクをさらに高める可能性も指摘されています。

そのため、可能であれば子ども時期に顎を大きくして、歯を抜かずに歯並びを整えることは、将来の呼吸や睡眠の健康のためにも大きなメリットとなります。

 

当院の小児矯正では、主に以下の3つを組み合わせて治療を行います。

 

1. マウスピース(マイオブレースなど): 日中1時間と寝る時に使います。取り外し可能ですが、使わなければ効果がないため、毎日使用することが重要です。

 

2. お口周りの機能トレーニング: 呼吸や舌、口唇、飲み込み方などの機能改善を目指すトレーニングを、

1日10分〜15分程度行います。これも毎日続けることが大切です。

 

3. 拡大装置: 約半年間(3ヶ月間を1〜2回程度)使用し、顎を大きく広げます。ほとんどのお子さまが使用できています。
一般的な矯正治療では、子どもの矯正(一期矯正)の後に大人の矯正(二期矯正)が必要となるケースが多く、合計で5年程度かかることや、費用も倍になることがあります。

 

当院では、なんとか一期矯正だけで終わらせたいと考え、今の矯正法を導入しました。

 

その結果、当院で小児矯正をされたお子さまのうち、約9割が一期矯正のみで終了しており、二期矯正が必要になるのは約1割程度となっています。

もちろん、どうしても二期矯正が必要な場合もありますが、多くのケースで子どもの時期の治療で良好な結果が得られています。

様々な歯並びの症例で、きれいな歯並びになっています。
口呼吸や子どもの顔の変化に関すること、小児矯正の内容がテレビで紹介されることも増えてきました。

当院の矯正法は元々オーストラリアで生まれたもので、日本でも少しずつ普及していますが、経験値も重要な分野です。

大切なのは「気づき」と「日々の積み重ね」

 

お子さまの歯並びが悪くなる原因は、遺伝だけでなく、日々の呼吸や舌の使い方、飲み込み方といったお口周りの機能、そして姿勢や食習慣など、様々な環境因子が大きく影響しています。

そして、口呼吸一つをとっても、歯並びだけでなく、顔つき、睡眠、全身の健康に至るまで、幅広い問題を引き起こす可能性があることをご理解いただけたかと思います。

これらの原因を知ることは、予防や対策を始めるための第一歩です。ご家庭での日々の取り組み、例えば正しい鼻呼吸の意識、お口周りの簡単なトレーニング、

正しい姿勢や食習慣の見直し、栄養バランスへの配慮、そして丁寧な虫歯予防などは、将来の歯並びだけでなく、お子さまの健やかな成長と全身の健康を守るために非常に重要です。

もし、お子さまのお口ポカン、いびき、よく風邪をひく、食事中の丸飲み、姿勢が悪い、言葉の発達が気になるなど、今回ご紹介したような気になる点があれば、

ぜひ一度専門家にご相談ください。

特に顎の発育のピークである5〜7歳頃のお子さまがいらっしゃる場合は、小児矯正という選択肢も含めて、早めに相談することで、お子さまの将来の可能性を広げることができます。

 

ハピネス歯科では、歯並びや虫歯予防、顎の発育だけでなく、姿勢、栄養、ことばなど、お子さまの健やかな成長に関わる様々な側面からサポートを行っています。

矯正相談、BABY/KIDS Clubでの各種講座(歯磨き、食生活、栄養、姿勢、ことば、原始反射など)、言語訓練相談 などを通して、

地域の皆さまにより健康的で素敵な笑顔を増やしたいと願っています。

歯並びの問題は、お子さま一人で抱えるものではありません。ぜひご家族皆さんで原因を知り、日々の生活の中で楽しく予防や対策に取り組んでいきましょう。

そして、もし気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。ハピネス歯科おとなこども歯科(☎0564-62-0505)

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